そろばん自体は非常にシンプルで簡単な構造です。
だからこそごまかしが効かない習い事で、地道にコツコツ積み上げることでしか上達はしていきません。
本のタイトルになりそうな、「世界一簡単な~」「サルでも分かる~」「1週間でできる~」という方法がそろばんにはないのです。
でも、あえて最速上達法ということで、最も理想的な通い方や練習への取り組み方を考えてみたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。
継続は力なり ~毎日やる~
言われ尽くされた言葉ですが、これ以上にそろばんという習い事に合っている文言はないでしょう。コツコツ積み上げていくことこそ、物事を本質へ近づける唯一の道です。
そろばんという習い事は素晴らしいことは間違いありません。ただし、それなりの見返りを求めるのであればそれ相応の犠牲も伴います。英語に水泳にピアノに公文にそろばん。ダンスやプログラミングにも興味があるから、全て週1回でやらせてみて、子どもに合ったもの、才能を伸ばせそうなものを選択したい、という気持ちも分からなくはないです。
しかしどれもこれもは無理なのです。特にそろばんは週1回の宿題なしでは上達不可能。楽しくなるはずもないので初めから選択肢から外した方が良いと思います。
ただし保護者が協力してもらえるのであれば話は別です。毎日10分のトレーニングを習慣化できれば道は開けます。
野球やサッカーのように相手との戦いではなく、決められた基準のクリアを目標とするので努力の分だけちゃんと上達を感じられ、意欲が増していくのがそろばんの良いところでもあります。毎日の取り組みの中からたくさんのことを身に付けることができるでしょう。
超効率 ~触り続ける~
では10分の中で、どのような練習をするべきかについて考えていきたいと思います。
10分というのはとても短い時間です。もし難しい問題を解こうとすれば1問で終わってしまうかもしれません。考え続けることもトレーニングと言えるでしょうが、毎日の家庭学習には不適です。
ポイントを1つあげるとすれば、特に初歩学習時においては「とにかくそろばんに触り続ける10分間にする」ということが大事になってきます。
最も簡単な効率的な練習法は、そろばん教室で練習してきたプリントを持って帰ってきて、同じ答えになるように計算することです。
これで「答えを書くというムダ」を排除できます。
そして分からなかった問題については、後日そろばん教室で教えてもらうことにして放っておくことです。
これで「考え続けて手を止めるムダ」を排除できます。
この考え方でいくと、そろばんの端から端まで1つずつ足していく練習や、123456789と置いたり払ったりするだけの指の運動を繰り返すことも有効です。
自分で自由な発想で取り組めるメリットもありますし、「問題を見るというムダ」も排除できます。
限界突破 ~一気にやる~
週に1回程度しかそろばん教室に通えないのであれば、家庭学習をする必要があると述べました。それでは、限りある時間をまずはそろばんに費やそうと決めてくれた人たちに対しての回答も書いていきましょう。
そろばんの世界では段位合格が1つの目指すべきゴールとなります。十分な計算力を身に付けた証とも言えますが、平均的に累計300~400時間の学習が必要です。ゆっくりマイペースに進めていくことももちろん大事なことですが、ここでは一気に短期間で取り切ってしまう1つの例をあげていきたいと思います。
まず、そろばんは週3日通いましょう。練習時間は慣れるまでの3ヶ月くらいは1時間で十分でしょう。それに週3日通えば家庭学習も必要ありません。並の能力があれば順調に伸びていくでしょう。
その中で、隔週で良いので土曜日か日曜日の午前中に長時間練習の練習として2時間半程度やってみましょう。最近は週末も教室を開けているところも増えてきたので、可能なところも増えてきていると思います。
これで1ヶ月の練習時間は17時間程度確保できました。
慣れるまでの期間3ヶ月間で計51時間ですね。この頃には、かけ算やわり算もできるようになっていることでしょう。
段位までの残りの練習時間は249~349時間となりました。
ここで「限界突破 ~一気にやる~」というタイトルの通り、普通ではない練習時間に感じるかもしれません。でも実は、頭1つ飛び抜けている生徒(教室)はこの環境が当たり前なのです。
しかし、たくさんある習い事の中からそろばんを選んでくれたのであれば、頭を1つも2つも飛び抜けてもらいたいですし、さらに短期間で成果を出してもらうことによって、その後の選択肢も広がっていくと思います。
「多くを得るために多くを捨てる」これは真理であり、そろばんほど確実に成果が出る習い事はありません。シンプルであるが故の強みが子どもを対象としたそろばんには顕著に表れます。
もしこれを1ヶ月継続できれば、練習時間は計64時間にも上ります。残りは249~349時間でしたから、4ヶ月~5カ月半程度で段位になれることになります。
最初の3ヶ月間を加えて、7ヶ月~8ヶ月半、余裕をみても1年未満で段位合格になるでしょう。
これは極端な例でしたが、一番のポイントは長時間練習をすることで上達を早める効果があるということです。実際に小学校でも45分×6コマ=4時間半くらいは勉強している訳ですし、土日の疲れていない状態であれば大体の生徒がこなせるでしょう。
徹底的にやり切る経験は貴重な財産になります。普通は1時間、の普通はどういう根拠で出てきたのでしょうか。今は「普通は3級」という時代ではなく、「どれだけ能力を伸ばし、その子の可能性を広げてあげられるか」が重要視されているのであって、そのための方法論として長時間練習という選択肢は常に持っていてください。
時間制限 ~大会・検定に挑戦する~
上達する最も簡単な方法は、大会に出て、検定試験を受けることです。
努力にリミットがある方が集中力に歴然の差が生まれ、目標がはっきりすることで自分自身を鼓舞することができます。
単純に、大会が終われば次の大会を目指して練習する、または毎回検定試験を受ける、ということで良いのです。
そしてお金と時間をかけた分、保護者の興味や関心も沸いてくるので、生徒にとっても頑張る価値がグッと高まります。子どもたちの親に対する承認欲求はとても大きなものがあり、強い動機・高いモチベーションに繋がることで、さらに良いサイクルになっていきます。
いろいろ考えるのが面倒な人は、常に大会や検定で次の目標がある状態にしておくこと、が最もシンプルな上達法といえるでしょう。
さいごに
今回は最速上達法について書いてみました。
いろいろ言ってみても、限られた条件の中でみんな精一杯取り組んでいることは分かっています。
だからこそ、そろばんが上達しないことで子どもたちが苦しまないように、通い方・練習の仕方は十分に考慮する必要があります。
週1回休まず通えるならまだしも、月に2回程度という生徒も少なからずいる状況です。
本来であればたくさん通うことでたくさん上手になり、その分だけ楽しくなる訳です。上達しないのに楽しいと感じることは誤魔化しとしか思えません。
非常に偏った考えかもしれませんが、30年くらいはそろばんに携わった人間の率直な感想ですので、少しでも塾運営の参考になれば幸いです。