指導法

そろばん指導入門2 ~運指・算法3~

そろばんでやれる=あんざんでもやれる
 いつから暗算の導入をやっていけばいいでしょうか?
 私はなるべく早く指導していくのが望ましいと思います。入塾したその日からすぐに教える教室もあるようですし、低学年であればあるほど簡単にイメージできるようです。
 そろばんで計算できた問題をすぐに暗算で計算できる子もいます。これはそろばんの練習用の問題だからそろばんを使いなさい、という固まった考えだけにならないようにしましょう。その挑戦はとても素晴らしいことだと思います。もし本当に正解が続くようなら、暗算でできない問題を与えてあげればいいだけです。その子にとってそれがそろばんの練習にちょうど良い問題になり、すらすら弾けるようになると暗算に切り替わっていくのです。
 アバカスサーキットのようなピラミッド式の問題を常に使っていると、このような場面に多く出くわします。もちろん全員に当てはまることではありませんが、個々の能力を引き上げていく上では、指導者(もしくは先人の教え等)の先入観や常識は一度疑って考えなくてはいけません。
イメージしやすいのは5玉と同時操作
 私は様々な算法をこれまで試してきましたが、運指だけは変更しませんでした。自分がやりづらいものを生徒に教えるのに抵抗があったことと、何より、より良くなる確信が持てないままだったので高いリスクを取れずにいたのです。
 しかし数年前から運指を変更しました。これまで長く考えてきた末に、暗算をイメージしやすくするためにはコレだろう!という直感的なものを感じたこともありますが、導入してすぐに見学に行った奈良県のとある教室(実績を上げている超有名塾)でも同じ運指で指導しており、やはりコレだ!という確信のもとに全教室で取り入れたのです。
 それが、5玉と1玉の同時操作です。3+4=のような計算は、5をたして、1をひく、という手順で操作します。しかしウチでは同時なので、5玉と一緒に(1つ)下にいく、という操作方法です。違いは指の使い方。同時にするということは、1玉は親指の爪の部分で動かすことになります。つまり、1玉は常に親指で下げるよう訓練を積んでいくのです。
 しかし良く考えてみてください。同時操作ということは弾き終わった直後に指を止めると、答えの7をつまんでいるような形になるのです。これが暗算の計算時に活きてくるのです。
 もちろん運指や算法については未だに結論が出ていないので正解がありません。つまりはどれを選んでも間違いではないということでもあります。しかし、指導する側の意志や意図が感じられる(伝わる)くらいには考え抜いて欲しいと思います。ウチは暗算重視の指導をしているので、それに合った運指・算法にしていますが、検定合格級は珠算と比べても暗算の方が2~3つ程度上になっています。皆さんは生徒たちにどんな能力を身に付けさせたいですか?
 ~ 高学年からの暗算は難しい!? ~
 高学年になればそろばんを使わなくても簡単な計算なら答えを出すことができます。そうできるように小学校で何年も訓練を積んできた訳ですが、そろばん式暗算をマスターするためにはそれが落とし穴だったりするのです。
 例えばあなたが本を読むとして、電子書籍という便利なものがあるよ、と言われたらどうしますか?いや、紙の本の方が読みやすいし好きなんだよね。別にそれで困っていないし。などど思う人も多いと思います。そうなんです、高学年であれば6+2や4+9のような計算には困らないんです。もうすでに十分な計算力があるから、そこのやり方を変えることに積極的にはなれないんですね。
 しかし、いつかは543×926のような計算を暗算でやらなくてはいけないくなります。その時に許された時間は10秒程度、筆算をするスペースもありません。そのような状況になってはじめてそろばん式暗算をちゃんとやっていないとどうしようもないな、困ったな、と思わされることになります。
 本で言えば、100冊200冊とどんどん増えていった場合はどうでしょうか。だんだん置き場所がなくなっていって、2列にしたり段ボールにいれて物置にしまったり。それでも読みたい本はまだまだある。困ったな。
 または、長期間の旅行で本を持っていきたいときはどうでしょうか。1週間あるので3冊、いや4冊、どうしようかな。あまり重くなるのも嫌だし。困ったな。
 もちろん紙で保存しておきたい大事なものもあるでしょうが、たまに目を通せたら良いという程度の優先順位が低いものはたくさん出てきます。そのような状況になってはじめて電子書籍というものがあれば便利だな、と気付くわけです。しかし気付いたところで紙の本が勝手に電子化されるわけはありません。最初から電子書籍を買っていればいつでもスッキリとした状態でいられたことでしょう。

例えが良くなくて分かりづらかったでしょうか?ごめんなさい。

でも言いたいことは、そろばん式暗算に切り替えていくことで将来大きな違いが生まれることを想像してほしいということです。そのために簡単な計算においても、しっかり指を動かして玉をイメージする訓練がとても大切なのです。高学年であればあるほど、意識して取り組ませなくてはいけません。