それでは全員が1桁でやればいいのかというと、それとはちょっと話が変わってきます。2桁の方が圧倒的に高度な脳力が培われるので、かけ算やわり算等の他の種目への好影響はもちろん、情報処理速度やイメージ力などの広く応用が利く力が身に付くのです。3桁、4桁なら尚更のこと。
ほとんどの珠算関係者、特に高い技能と教養を身に付けさせたいと考えている指導者においては1桁分割は推奨しないでしょう。あくまで「暗算段位検定初段」程度の合格が最優先で他はおまけ、と思っている方であれば1桁で計算していた方が最速で辿り着けます。どうぞ自由にやってください。
じゃあ結局分割しちゃダメってことね。粘り強く2桁やって、3桁、できれば4桁って、その子の能力が開花することを信じ続けて教えていくことが大事ですね!
いやいや、それじゃ普通でしょ。
わざわざ先生向けに提言することじゃない。
ここまではフリです。
分割計算を指導しない人に聞くと、2桁までは必ずやらせるけど、3桁は時間がかかりすぎる子が多いからその時によるなぁ、なんてことをいっていたりします。この境界線はなんでしょうか?実際に2桁ができないで苦しんでいる子は教室の中に少なからずいるのに、その子たちには「絶対できるようになる、頑張れ!」と言っておきながら、3桁になると急にトーンが落ちることに違和感を覚えます。
ただ単に今のそろばん教室のシステム的に(週2日~3日くらいの練習量で)2桁ができるようになる子が多くて、3桁が少ないだけの話です。当たり前でしょ、より高度な事を要求しているのだからできるようになる人数は減るに決まってる。問題視しているのは指導者側の「気持ち」の部分についてです。習っている人は2桁できるようになったらうれしいのですか?3桁ですか?もしかすると、級が上がっていくことの方がうれしい子っているんじゃないでしょうか?
全員が2桁できるようさせてあげられる教室はどうぞそうしてください。私も2桁でできるようにしたいし、頑張っています。それでも苦手な子に対しては、他の教室が時間をかけてちょっとずつできるようにしている間に段位まで合格させてしまいたいと思います。
手にいれる明確な評価(この場合は段位合格)が自信となり、その子の可能性は拡がっていくと信じています。もう1つ、実証になり得る話を紹介しましょう。
ウチの教室にはがんばり屋の2人の姉妹が通っています。家でも練習するし教室でも数時間やっていきます。競技大会にも参加してより大きな目標達成に向けて努力しているのです。競技大会といえば計算速度が重要です。見取暗算も3桁ができなければ通用しないと言われています。しかし2人とも3桁の計算が苦手で2桁分割で見取暗算をやります。それでもがんばって練習して、どの程度までいったかというと・・・
2人とも県大会で優勝するほどに上達しました。ガチンコ勝負でも2桁分割が3桁分割に勝てることの証明です。たぶん無理矢理3桁に固執したら勝ててないのではないかと思っています。指導者である以上、理屈より「心」が勝る場合があるということを知っていてほしいし、少ない練習時間でも結果にコミットできるように努力しなくてはいけません。理屈より実証というのは、西洋医学より東洋医学的な考えでしょうか。