指導法

段位暗算~かけ算編~

そろばん式暗算の方法はたくさんの問題集や導入書に書かれていますし、今更解説する必要はないと思います。

だが、あえて取り上げよう!

今までの教え方は間違えているんじゃー!

考えるきっかけ

この間、ある先生から電話をいただいてこんな話を聞いたんです。

「段位のかけ暗算の導入の時さぁ、~くんはどうやって教えてる?

… なるほどね。でも普通に考えるとややこしいよね。

頭数同士の九九で『が』がついたら1桁減って、繰り上がったら戻って。

小学校の高学年ならいいけど幼児や低学年の子だったらなかなか理解できないでしょ。

それで段位の導入書作ったんだよ。内容は … でさぁ、…」

 

おおぉ!やっぱりそうだったのかぁぁぁ!!

当然知っていたけど正攻法ではない、いわゆる『邪道』なやり方。

いや、邪道だと勝手に思い込んでたやり方。

今までは教える時間が取れない時にこっそり教える裏ワザだったけど、短い時間で説明できるシンプルな方法が結局は正解だと思います。

もちろん進度に応じて様々な算法へ変えていくのは必要でしょうが、第1歩目はコレでしょ!

そろばん業界の正攻法

みんな知っていると思いますが、かけ暗算のやり方を簡単におさらいします。

例1)9.8 × 0.76

この場合は98×76の計算をし、7448という答えを書きます。

9.8は整数が1桁、0.76は整数が0桁です。

1桁+0桁=1桁なので、答えの整数は1桁となります。

上から1つ目に小数点をつけて「7.448」という答えを完成させます。

 

例2)1.2 × 3.4 =

この場合は12×34の計算をし、408という答えを書きます。

1.2は整数が1桁、3.4も整数が1桁です。ただし頭数同士の九九(1×3)は「が」がつくので(10の位の数がないので)1桁減らします。

1桁+1桁=2桁。「が」がつくので1桁減らして、2桁ー1桁=1桁なので、答えの整数は1桁となります。

上から1つ目に小数点をつけて「4.08」という答えを完成させます。

幼児や低学年が段位をやる時代

上の例題以外にも、23×45のように、頭数同士の九九で「が」がつくのに1桁減らずに2桁+2桁=4桁になるような問題も当然出てきます。

ウオォーーー!!分かりずれぇ!!

大人はまぁ理解できるでしょう。高学年の子も何度も説明を聞けばそういうものかと納得できるかもしれません。でももし幼稚園の子が段位になったとして、うまく説明する自信ありますか?

説明の仕方は多少違えど、ほどんどのそろばんの本ではこのように説明されていますし、そもそも導入書自体に種類がなく、自分が教わった通りに指導してしまっているケースがほとんどだと思います。

先入観というか思い込みというか、これが正しいやり方で最速・最高だと教わってきたので疑うこともしてこなかったのかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。

小学校でどうやって習ったか覚えてます?

小学校では小数を数えるように指導します。そう、小数を数えるんですよ!それが学校のやり方。ならそれでいいじゃん!なんでダメなの?

小学校式(小数をかぞえる)

例1)9.8 × 0.76 =
この場合は98×76の計算をし、7448という答えを書きます。
9.8は小数が1桁、0.76は整数が2桁です。
1桁+2桁=3桁なので、答えの小数は3桁となります。
後ろから3つ数えて小数点をつけ「7.448」という答えを完成させます。

例2)1.2 × 3.4 =
この場合は12×34の計算をし、408という答えを書きます。
1.2は小数が1桁、3.4も小数が1桁です。
1桁+1桁=2桁なので、答えの小数は2桁となります。
後ろから2つ数えて小数点をつけ「4.08」という答えを完成させます。

 

「が」のつく計算も頭数が繰り上がってしまう計算も考えなくていい、実にシンプルな方法です。

そろばんを習う子どもたちは低年化してきていますし、その流れはこれからもどんどん強くなり避けられないものになってくるでしょう。邪道な方法だからと切り捨てず、時代に合わせたやり方を賢く選んでください。

変えるタイミング

段位でも高段位になれば、0.8923 × 0.467 = のような問題が出題されます。

この時に、8923×467=4167041を求めてから小数7桁を数えるよりも、整数+整数=答えの整数というのを知っていれば0+0=0なので答えは「0.」だと瞬時に分かりますし、全て計算しなくても2×4のあたりで416と答えが出る(暗算段位は小数第3位未満切り捨てという条件がある)ので計算が早く終わるわけです。

あ、この方がラクじゃん!と思ってもらえるようなタイミングで本来の算法に切り替えることをオススメします。

まとめ

段位のかけ暗算の計算方法は、

整数+整数=答えの整数 よりも 小数+小数=答えの小数 にした方が幸せになれるかも?

特に低学年の生徒に対しては(学校と同じ)小数を数えるやり方で指導し、成長に合わせて整数を数えるやり方に切り替えていくという選択肢もあってよいのではないか。

柔軟性がなく頭の固いそろばんの先生!聞いてますか~(・`д・´)

探求心に溢れ勉強熱心なそろばんの先生!聞かなくでね~(>_<)

ということで、あくまで新米先生のための記事です。

まぁ小数の理解が難しい年齢の子には整数だけの問題でどんどん桁幅を広げていく練習をさせていけば良いとは思いますが、やっぱり段位検定に挑戦させてみたい気持ちもありますもんね。

次はわり算の方法を考えてみまーす!