塾報を毎月発行していますが、保存してくれている方は極わずかだと思います。捨てられるにしても目を通してもらえればありがたいくらいで、カバンに入りっぱなしでそのままゴミとなっていくことも少なくないでしょう。
私ですら昔の記事を見返すことはあまりないのですから仕方のないことです。けれどウェブ上にあればもしかしたら読み返してもらえるかもしれません。
今回から数回にわたり塾報で一度お伝えした内容の中から、教室の情報以外の部分を抜粋して掲載していきたいと思います。
環境をつくる
新しい習慣を身に付けたい、もっと良い時間の使い方をしたい、とは誰もが思う事です。しかしなかなか上手くはいかないもの・・・
そろばんの練習にしても、始めた頃は家でもしっかりやらせていても、だんだんとできなくなっていくのは自然な成り行きなのかもしれません。
しかし、当然の事ながら練習をせずに技能を上達させることはできません。昔はより効率よく授業を行えば練習不足も補えるのではないか、と試行錯誤した事もありましたが、効率を求めれば求めるほど無駄はなくなりますがそろばんを嫌いになる率も上昇していきます。
延長練習者が上達しやすいのは、きっちりした1時間の後にちょっとの休憩時間と比較的ゆったりとした追加の練習時間を確保できることが一因でしょう。
週に1回しか通えない子は練習不足で上達しないのかもしれませんが、教室に馴染めずにモチベーションが上がらないことも原因かもしれません。先生とのコミュニケーションの量も他の子の半分以下になるわけですし、小学校が違ってしまえば子供同士ですら仲良くなれないのは仕方のない事です。
1週間のうちに何回通うかで月謝は異なりますが指導回数が多くなるから上がる訳ではありません。もし指導回数で料金が上がるのであれば、初歩学習者の月謝は1万円で段位練習者は1000円になってしまいます。
私たちのような学習系の教室が提供するのは学習環境です。週に1回であれば自宅練習が多くなるので学習環境を整えるために保護者の負担が大きくなる訳ですから月謝は安くなりますし、週に3回教室にくれば学習環境を整えるのは珠算塾になりますから月謝は高くなります。
例えば、ダイエットがしたいと思ったとします。自分で管理ができたら0円です。しかしそれが(普通の人は)できないから、無理をしてでもライザップに大金を払うのだと思います。自分がやらざるを得ない環境を作り出すことは簡単ではないからです。
学習塾の月謝が高いのも、高度な指導の他に自習室で自由に学習できる環境を提供できることも価格に含まれているからでしょう。ウチの教室では祝日や長期休みがあることも踏まえて延長練習の料金をいただいていません。使える環境を上手に活用して、自らの目標達成を果たしていただければと思います。
幸いなことに当塾には多数の段位合格者に加えて、県大会の優勝者、東北大会出場者等の優秀な技能を身に付けた生徒たちがいます。その練習量は今後の学習のヒントになるかもしれません。最近の主な成績と練習時間です。※1年前の記事なので昨年のデータです
Aさん(県大会個人総合優勝者)41時間25分(7月)46時間39分(6月)
Bくん(県大会種目別優勝者)16時間58分(7月)22時間24分(6月)
Cさん(全国大会・東北大会出場者)42時間1分(7月)46時間38分(6月)
Dさん(暗算1級1年で合格)19時間45分(7月)29時間21分(6月)
Eさん(フラッシュ1級9カ月で合格)11時間2分(7月)7時間28分(6月)
上記の通常練習時間に合同練習会・夏期講習等の特訓、自宅練習が加わります。現役の生徒たちの一例ですが、参考になったでしょうか?
教えすぎない(教わりすぎない)
上達のための最短ルートは、自分でできることを増やすことです。難しいけれど先生にちょこっと教えてもらえば解ける問題をやるとして、10分間の練習で10問正答できたとします。すると次にやるときは自力で1問は解けるでしょう。しかし、逆の見方をすれば9問も先生の指導が必要になるということです。
反対に、先生に教わらずにわずかなヒントだけで解こうとした場合は10分間で1問か2問しか終わらないでしょう。けれども次にやるときは自力で2・3問解ける可能性は高くなります。
ですから1問を10分間考え続ける我慢強さがある子には自分でやるように仕向けます。これは「教えない指導」ということですが、自分でできることを増やす、という見方もできます。
これはとても大切なことですが、全員に通じることでもありません。「できない」、「分からない」、「さっきと同じだ」、こんな状態が2度・3度続けば諦めてしまったり、嫌になったり、他のものへ逃げたりするわけです。
これもトレーニングですので、負荷をだんだんと増やしてできるようになることでもありますし、学校や家庭で問題があって精神が疲れている時は、昨日できたことが今日はできないということが当たり前のように起こるので、気持ちが不安定な幼少期においては特に判断が難しくなります。
そろばんの体験学習は1+1や2+1のような簡単な計算からはじめるのですが、簡単なものができない我が子を見ていることに我慢ができず、どんどん教えてしまう保護者がたまにいらっしゃいます。1問や2問なら分かりますが、最後まで指示して終わらせてしまうのはあまり感心できません。先生と保護者の2人から言われた通り動かす「作業」を強いられてもできた喜びは半減してしまうことでしょう。
大人にとっては簡単なことでも、その子にとっては1分考えても分からない難問なわけです。だからできるようになろうと一生懸命考えているので、その時間を奪ってしまうと次もまた1から考えはじめなくてはいけなくなります。
先程も述べたように心が挫けないように助けてあげることは必要です。しかしその子が考え続けている限りは手を出さないで見守ることも意識しなくてはいけません。
そろばんは頭のトレーニングです。脳内では鉄アレイを一生懸命上げ続けているのに、気が付かなかったからと鉄アレイを取り上げてしまってはトレーニングになりません。
ただし1つだけ気を付けなくてはいけないのは正しいフォームで筋トレしないと体に悪い影響があることです。スジを痛めるかもしれませんし、あまり効果のない事を繰り返しているだけかもしれません。
そろばんの場合は間違うクセがついてしまうので大変です。直すのにその倍の時間を要します。
家庭学習では、出来ることを「より早く」「より正確に」なるように復習に徹するのが良いでしょう。