宿題というのはマニュアルがある訳でもないし、教室として説明文を用意している訳でもないので、きちんと取り組んでもらうことが難しいと思います。
ならばウチの教室での『宿題マニュアル』を提示しよう!というのが今回の記事の趣旨になりますので、他の教室の先生方は参考程度にご覧ください。
具体例を書く前に注意点から触れていきましょう。
気を付けるべき「やった気分」
せんせーい、しゅくだいやってきたよー
おー、うれしいなぁ。どれどれ、みせてみて。
わーい、ぜんぶマルだー♪
うん、やってきたのはえらいよ。でも…5問じゃなぁ…
笑えるようで笑えないこんな会話、実は珍しくないんですよね。
やらないよりもやった方がいいのは当然のこととしても、じゃあ毎日1問だけでいいのかって話になります。例えるならダイエットのためのウォーキングですかね。毎日5分では足りないのと一緒です。ちなみに早歩きで20分以上歩かないと脂肪は燃焼しないと言われています。効果を出す最低量というのがどんな物事にもあるものです。
1週間休んでいた子が「おやすみしてたからおウチでいっぱいやってきたよー」といって初歩教材1ページ分を出されても、あまり褒めてあげられない(毎日コツコツ積み上げる「習慣化」の練習としてみれば効果はあるかも…)ということですね。
その子にとってみれば「いっぱい」なのかもしませんが、これで満足されてしまっては困る訳です。
理由は『これを続けても上手にならないから』。
やったような気分になれるだけ、がんばっている気持ちになれるだけ、褒めてもらえることをしているという満足感に浸るだけ、そんな自己満足から脱却して、ちゃんと上手になる取り組み方をしましょう。
だって大切な時間とお金を投資してそろばんを習ってもらっているんですから、それなりのものを身に付けてほしいじゃないですか。
家ではこれをやろう!
さぁ、それでは具体的に何をどのくらいやれば良いかを書いていきます。
練習時間は毎日15分。もちろんたくさんできる人はたくさんやってもらって構いませんが、『最低限このくらいは頑張ろうね』という目安です。
そのうち10分くらいは集中して取り組めるでしょうから6日間で1時間分の練習にはなるでしょう。
初歩学習「そろばん!スマッシュ」(11級程度まで)
幼児用に作られた新しい教材です。とても良い本なのですが日本計算技能連盟の会員限定販売なので入手が難しいかもしれません。興味のある先生は連盟に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
ウチの教室では幼児と低学年の生徒に使ってもらっています(最近はじめたばかりなので切り替えが済んでいない方もいるかもしれません)。
この本の優れた点は幼児でも無理なく進められる上に、教室で習った部分の復習をする『しゅくだい』というページが用意されているところです。
スマッシュは進んだ分だけ『しゅくだい』のページを練習する、これだけです。
理解が早い、または通塾回数が少ない、など理由がある場合は通常の練習ページも途中で飛ばしてしまうこともありますので、できそうな時はそこも練習してください。
初歩学習(7級程度まで)
初歩学習時はちびっこそろばんが最適です。基本的に教室では練習しませんので、復習という意味では今の練習級より1つ下くらいがちょうど良いレベルです。
取り組むページ数は以下の通りです。
・ちびっこそろばん1~4・・・2ページ
・ちびっこそろばん5・6・・・1ページ
・ちびっこそろばん7・8・・・半ページ
(※ちび1…15級、ちび2…14級、ちび3…12級、ちび4…10級、ちび5…9級、ちび6…8級、ちび7…7級、ちび8…6級)
15分で終わらなければ集中できていないか、取り組むべき問題の難易度が難しすぎる可能性があります。家庭学習は指導が必要ない自分だけで進められる問題が望ましいです。
冒頭でも書きましたが、『宿題やってきたよー!』とドヤ顔で渡された問題集が5問しかやっていなかったり、『今日は1ページやってきたよー!』といっても迷路だけのページだったり・・・(ページ毎に難易度が違うのは分かりますが)効果的な取り組み方をしなくては、だたの「宿題をやった」というパフォーマンスをしているだけに過ぎません。
自己満足だけで上達はしませんのでしっかり練習してください。
(そろばんの練習問題がないページはカウントしない!)
中級者(珠算3級程度)
・アバカスサーキット・・・1枚
・珠算問題集・・・かけ算&わり算 又は みとり算&直し
・暗算問題集・・・全種目
検定練習が主となるので、受験する珠算または暗算の問題集に取り組みましょう。学習時間に制限がある場合でも見取算(見取暗算)の直しはしっかりやってください。見取算は全ての計算の基礎となる大事な部分ですから中級者にとって取り組むべき最重要項目となります。
上級者(暗算段位程度)
・大会問題
・桁別トレーニング
中級者と同じ内容で良いのですが、これまで検定を中心に練習をやってきたのですから努力の方向を変えてみるのも一つの方法です。大会やコンテストなどの大きな目標に向けて練習をしてみましょう。また、高学年や中学生の人も多いのであまり時間を確保できないかもしれません。そんな時は暗算の限界桁(例えば4桁×3桁を10問)の問題を短い時間(3分程度)しっかり集中して取り組むことを継続するだけで違いが生まれます。習熟度を教室でみてもらい、それを元に指導者とともに取り組むべき課題を定期的に確認してください。
宿題をする際のお願い
基本的に宿題の採点は保護者が行ってください。
もちろん間違えた問題を保護者が指導する必要はありません。どうしても分からないところは教室で教わりましょう。
保護者が忙しくて採点できない場合はそのまま教室に提出してもらって構いませんが、当然その日の指導・採点が優先になります。量が多かったり時間を取れない場合は翌授業日に返却することになりますのでその場合は他の問題集を取り組んでください。(『ちびっこそろばん』⇔『あんざん入門』等)
それぞれの役割
やはり生徒だけが頑張ってもダメですし、それは保護者だけ、先生だけが頑張っても成果が出にくいのと同じことです。3者が上手にかみ合って、教室という箱の中で友達や先輩、後輩と一緒に切磋琢磨できる環境が大切になります。
・教室は練習できる環境を用意して子どもたちを迎え入れる。
・保護者は休まず出席できるように体調管理とメンタルケアをして子どもたちの背中を押してあげる。
・先生は前向きに取り組めるように励ましながら目配り気配りをする。
・子どもたちは先生と保護者の判断を信じて突き進む。
その先には見せかけの喜びと達成感ではない、大きな満足感と確かな結果が待っていると信じています。
先生がやること
このブログは若手の先生向けにはじめたものなので、先生の役割についてもう少しだけ補足をしたいと思います。
先生は一生懸命指導することが最も大事な仕事のように錯覚しがちですが、実はそれよりも優先すべきことは顔を上げて生徒の様子を眺めることだとある方に教わりました。
『全力で教えて、全力で採点して、全力で指示して、全力で声を荒げて、とにかく必死でできる限りのことをやる、それが一生懸命やることだと勘違いしてはいけない。そんなことより、いつもより元気がない、身に付けているアクセサリーが違う、何かを話したがっている、同じ問題で止まっている、外の様子ばかり気にしてる、今日はやる気があるな、Aくんにライバル意識をもっているぞ、Bちゃんの隣はイキイキする、そういう些細な変化や調子をみることがとても大事だから、先生は常に顔を上げられるように余裕をもって自分のやるべきことを選ばなければいけない。』
そう、自分一人が頑張っても出せる成果はそれほど大きくないのです。
だからどうするかと言えば、生徒が自分だけでできることを増やしていって、時には保護者にも協力してもらいながら、正しい方向を指差すこと。
私は先生とはナメック星の最長老に近い存在だと思っています。それぞれの持ってる潜在力を引き出すことができるが、それはその人がこれまで努力してきた量と比例する力しか与えてあげられない。
しかし気を付けてください。最長老自身は決して強くない!
ドラゴンボールを読んだことがある人は分かると思いますが、最長老って体はデカいけどずっと弱ってますよね。だからイジめないでね~。やさしくしようね~。
先生と最長老は周りの能力を引き上げ導く存在。でも1人じゃ戦えない。
「みんな、オラに力をかしてくれぇー」 そんなとこでしょうか。
※スーパーサイヤ人になれる先生はこのブログ全般スルーでお願いします
まとめ
長々書いてきましたが、まとめると以下の2点に集約できます。
①教室としては月曜日から日曜日まで練習できる環境を用意しているので、最大限それを活用してもらう。
②あくまで週に3時間は最低練習量なので、必要に応じて通塾回数を増やしたり延長練習や家庭学習で補う必要がある。
地域によって状況は全く異なるでしょうし、ウチ場合でも私自身が指導している教室(エース)とその他の教室では目標設定に違いがあり、宿題や普段の学習の仕方も様々です。参考まで、ということで頭の片隅に入れておいてもらえれば幸いです。