先生用

リアルかオンラインか

最近ではオンラインで授業を行うそろばん教室も増えてきました。

とは言っても、数多あるそろばん教室の中のわずか一握りだけ。これまで「まなぶてらす」などで個別のレッスンはありましたが、集団でのオンライン授業というのは皆無だったのではないでしょうか。

皆さんの教室はどうですか?検討中ですか?それとも現状で十分ですか?

今回は『そろばん教室のこれからの授業スタイルはリアル?オンライン?』というテーマで書いてみます。

知識か技術か

リアルかオンラインか、という比較をする前に、そろばんという習い事の性質を考えみましょう。

私の教室の近くにあった学習塾の中でこのコロナ騒動後に姿を消したところが数店舗ありました。そう、オンラインに切り替えたのでリアル店舗が必要なくなったんですね。学習塾は指導内容が多岐に亘り、深い専門性も伴うため、講義形式の授業を『受ける』形が多くなります。学業や受験に対する知識を与えることが主な使命となるので、完全にオンライン向きです。

一方そろばん教室はどうでしょう。そろばんは同じ内容を繰り返しトレーニングしながら『気付き』や『発見』をすることで技術を成熟させていきます。そう、指導する内容って実はあまり多くないんです。習熟度に応じて必要な頃合いを見計らいワンポイントでアドバイスをする程度ですよね。

つまりそろばんは独自の計算法の『技術伝承』という意味合いが多く含まれているため、「自らが積極的に取り組まなくてはいけない」習い事なのです。

受動的でも成立するのがオンライン向き、能動的でないと成果が出ないのがリアル向き、と言えるのではないでしょうか。

そろばん教室がオンライン授業をやる理由

そろばんはリアル向きだと言いましたが、ウチのような小さな教室であってもオンライン授業を行っています。その大きな理由が『現状への対応』と『今後の備え』によるものです。

オンラインという受け皿

現在、ウチの教室では全教室で1コマ当たりの人数をかなり制限して授業を行っています。当然、来たい時間に来れなかったり、うまく振替できなかったり、様々な問題が起こる訳です。しかも現状でパンパンな状態ですから、新入生を受け入れる訳にもいかないし、何かの都合で時間を変更したい在塾生の要望にも応えることができません。

けれども、感染拡大防止の観点から当分の間は条件を緩和することが難しいでしょう。

今までように『学校帰りにそのまま教室に来て、何時間でも好きなだけ練習して帰る』ということがもうできない状態なのです。

つまり、リアル授業の価値は(今だけかもしれませんが)非常に高くなってしまっています。

ここで選択肢の1つとして「オンライン授業」は魅力的です。雨が降ろうが咳が出ようが、自宅から気軽に参加できます。実質人数制限がないので、環境が整っていて時間が合えばいくらでも受け入れることができます。

現在の状況への対応策として、オンラインというオプションは真剣に考える価値があると思います。

 

教室に来たくても来れない時がくる

コロナの第二波、第三波がやってくると言われていますし、地元でクラスターが発生した場合などはいかに教室で対策をしていようとも多くの人が外に出たくない心理状態になるものです。

世界的にはまだまだピークを迎えていないと思われる国も多く、日本でも昨日から都道府県を越える移動の制限が解除されたので、経営する側としては一気に感染者数が増えていく事態も想定しなくてはいけません。

宮城県内の抗体保有率が0.03%という数字も感染拡大を警戒するのに十分な要素です。

ではどういった対策ができるかといえば、そう、オンライン授業の活用です。今現在必要かどうかという問題ではなくて、必要になる事態が来る可能性があるかないかという判断をしなくてはいけません。

第2波、第3波が来ない確率はどの程度でしょうか。

私には全く分かりません。分からないから怖い。怖いから備える。

そろばん学習は継続することで効果を最大化してくれます。リアル授業はまた中断するような事態になるかもしれませんが、少なくともオンライン授業に参加してくれる生徒に対してだけは継続することが可能です。

極端な話をすれば、指導者がコロナウィルスに罹患した場合は(誹謗中傷も含めて)立ち直れないダメージを負うことも想定されますが、オンライン授業だけを見れば軽症で済む可能性が高い、というメリットもあるかもしれません。

最悪な事態に備えてのオプションとして「オンライン授業」は非常に優秀です。

オンライン授業への懸念

ノウハウがない

オンライン授業が必要だと分かっていても、なかなか動けない理由があるものです。

最も大きいのが『ほとんどノウハウがない』ということです。

今までのそろばん業界になかったことを気概のある人たちが「いっせいのせ」でスタートしただけの話なので、オンライン向けの情報は一部にしかまわっていません。

そろばんの先生向けのオンライン授業講習会も数回行われていますが、参加者は非常に少なかったです。少なくとも100名や200名規模で学ばなくてはいけませんし、一定以上の競争や協力がなければクオリティーは上がっていきません。

自習の延長でしかない

実際やってみると分かりますが、オンライン授業とリアル授業は全く別物です。

普段の授業では一瞬で教えられることも、オンラインだと同じ内容を伝えるのに四苦八苦するくらいです。

あくまでオンライン授業は自習の延長であって、個別指導(zoomのブレイクアウトセッションという機能を使う、1対1のレッスンタイムなどを設ける、プリントの写真を送ってもらった上で添削を行うなど)細かいフォローは別で必要になるでしょう。

指導者は練習を監視してくれて適度に声がけもしながら学習意欲を保ってくれる『モチベーター』的な存在として機能はするでしょうが、リアル授業と同じクオリティーを保つのは至難の業だと感じています。

技術のない先生は淘汰される

オンラインをみんなが積極的に選び始めるとどうなるか。

オンラインでの授業では生徒間のコミュニケーションはわずかなものに限られます。つまりリアルの教室に戻る事を加味しなければ、先生の良し悪しが大きな判断基準になるということになります。

これまでは学区や地域といった行動できる範囲に制限がありましたが、オンラインを活用すれば自由に選択できるようになるので、環境に守られるということが減っていくでしょう。立ち行かなく教室も多く出てくるのではないかと感じています。

今は問題が表面化していませんが、だんだんと学ぶスタイルが変化し、様々なものがオンラインに合わせて進化していくと予想されます。今のうちにパソコンの使い方や各種ツール(電子そろばんやオンライン教材等)を使いこなせるように準備をしておきましょう。

せっかく教える技術が高くても、ITのリテラシーが低いと活かせない場面が多くなってしまうかもしれません。

リアルが一番

とはいっても、やはりリアルが一番です。

今までのそろばん界のノウハウはそのような環境に合わせて成熟してきています。

リアル授業だけで完結するのあれば、それに越したことはありません。

 

しかし、今は新しい時代の転換期。地域性を活かしたリアル型、利便性を追求したオンライン型、どちらも併用するハイブリッド型、いろいろな方法があるでしょうが、「教育業としての成果」と「サービス業としての柔軟性」を両立できる方法を模索したいものです。

さぁ、これからどんな流れになっていくのか楽しみですね。我々そろばん指導者も新しい流れを生み出す一部になれたらもっとおもしろくなりそうです。暗い雰囲気を払拭し、みんなでワクワクしながら仕事をしていきたいので、新しいものも積極的に取り組んでみましょう!