指導法

そろばんのかけ算をやる前に大事なこと

下記内容は珠算界の常識ではないかもしれません。私の過去の経験による個人的見解を好き勝手に書き込んでいるだけですのでご注意ください。
基本はみとり算。むしろそれだけでいい。
 そろばん学習で最も重要なのはみとり算です。ちょっと熱心な先生なら誰でも知っていることで、みとり算の強化は早期上達のために絶対不可欠な条件です。そろばんを習ったばかりの頃は、わり算>かけ算>みとり算、の順に難しいと思うかもしれませんが、ほとんどの人が上達するつれ、みとり算>かけ算>わり算、に変わっていきます。
 みとり算は他の種目の倍以上の練習が必要にもかかわらず、その重要性に目を向けないことは得策ではありません。
「みとり算ができるようになれば、あとは何とでもなる」と思っていてください。
できるようになった!気がするだけ
 検定試験では9級からかけ算の問題が出てきます。これまでは「たす」と「ひく」しかできなかった子が、答えが何百にもなるかけ算の問題をすぐに解けるようになるのですから、きっとうれしさも大きいでしょう。
 そう、9級のかけ算はすぐできるようになるのです。簡単な知識が身に付いただけで、技能が向上したわけではないので注意してください。

 かけ算ができた!検定試験に合格して賞状がもらえた!というのは、単なる栄養剤でしかなくて、健康で元気マンマンであれば必要のない子もたくさんいるのです。

私の教室でも検定に沿って順序良く進めていく場合もありますが、自分の中では練習時間によって境界線のようなものが存在します。それについては別記事にて。
 かけ算をやるデメリット
 検定試験に合わせて進めていくと、10級合格後にすぐかけ算をやることになります。10級くらいの計算力ではまだまだミスが多く出てくるのは当然のことですが、その状態でかけ算をやると、自分自身では間違いの原因が特定しずらくなります。
 つまり、計算自体が間違えているのか、計算方法が間違えているのかがわからないのです。ですから早期上達を考えるのであれば、加減算ならばほとんど間違わないくらいの計算力をつけてから、新しい計算方法(かけ算・わり算)を習得していった方が早く上達できるわけです。
 他にも、九九を覚えていない、迷って手を止めている時間が長い、弾き方や計算位置、姿勢等の基本が十分に身についていない、ということも多く、新しいことをするには時期尚早です。
 みとり算集中練習のデメリット
 それでは反対に、みとり算だけをやるデメリットにも目を向けてみましょう。
試験が受けられない、進級に対する満足感が小さい、問題のバリエーションが限られる、市販のテキストが使いづらい等々、いろいろあるかと思いますが、全部をまとめて簡単にいえば 飽きる のです。
 同じようなものの繰り返しがそろばんをつまらなくする原因ですが、そのダメな部分をさらに増徴させてしまう事になりかねません。
 ですから、そうならないように教室ではいろいろな工夫をするわけですが、それに限界を感じると検定に沿った形に落ち着いてしまうわけです。
 言ってみればこれが昔から多くの教室で取り組んできた王道で、これでダメなら仕方ない、という短絡的な結果に落ち着きます。でも本当にこれでダメなら仕方ないのですか?
検定なんか受けなくていい
 そうです。タイトルの通りです。あなたが6級合格を目指しているのなら止めません。10級から順番に受けていってもたかが知れています。
 そろばんを習うのにお金がかかる理由の一つは検定試験です。全国珠算教育連盟が実施している検定試験でも珠算、暗算、フラッシュ暗算と3種類あり、そのすべてで1級まで受験したとするとおよそ4万5千円もの金額がかかります。珠算だけに絞ってみても約2万5千円です。どうですか?それでも受験しますか?
(そろばんのお金の話は今度別の機会に書きたいと思います)
 結局保存しておくのは最後の1枚だけです。大学受験と違って滑り止めは必要ありません。だって2ヵ月毎に何度も受験できるのですから。
検定というお薬
 検定試験はモチベーションを上げるには良い効果があると思います。普段の練習ではそんなに大げさに褒めることもないでしょうし、日ごろの努力を労うキッカケとして有益です。でもそれだけ。
褒められてうれしい、私はもう~級に合格したのって自慢できてうれしい、賞状がもらえてうれしい、という元気になる薬としての効果はあるでしょう。でも、あなた(又はあなたの生徒さん)は薬が必要なほどに弱っていますか?薬は過度に摂取すれば毒になります。ここぞのタイミングで受験しましょう。
 あえてもう一つ検定受験のメリットを付け加えるとすると、申し込みをすると練習の集中力は上がります。級が上がることがうれしいのか(これも検定に合格しないと進級させないという教室のルールによるところが大きい)、お母さんからのプレッシャーがあるのか、理由はそれぞれでしょうが、お金の問題を無視した場合はやった方が良いことは明らかです。また、自己啓発系の本によく書かれていることですが、目標に期限を設けることで作業能率が上がります。検定試験は上手に活用してください。
みとり算をやるなら日商検定問題
 みとり算だけを練習するといっても、検定問題に準拠した問題を使うことに変わりはありませんが、検定の問題内容も主催団体により様々です。オススメは日本珠算連盟の検定問題、いわゆる日商検定を使ってください。さらにあなたが珠算関係者で旧日商検定の問題を入手できるのでしたら、そちらも併用していただくと効果はより大きくなるでしょう。
(3つの連盟の違いについてもいずれ記事にします)
(みとり算の難易度比較についてもいずれ記事にします)
うちの教室の進め方
 真似はしなくてもいいです。私の教室の進め方を参考までに書いておきます。
① 初歩学習教材で加減算の基本をマスター。
② 全珠連10級(1桁6口)程度ができるようになると初歩学習終了。
③ 日商10級(2桁5口)~日商7級(2桁10口)
 検定の基準でいえば10分70点で良いのですが、できれば10分以内90点以上(9分台は90点以上、8分台は80点以上、7分台は70点以上が目安)を安定してとれるようになるまで続けます。
7級合格後は6級に進まずに旧日商7級(2桁15口)を取り組ませる
 ④ 7級から旧日商を入れていく(7級→旧7級→6級→旧6級・・・)
 これだけで力の付き方変わります。やってみれば、たかが5口で正解率がガクッと落ちるのが分かるでしょう。この15口練習が上達の肝になります。苦しいですがここを乗り越えさせると計算の精度が急激に上がり、ここでしっかりベースを作ると何をするにも強いです。
かけ算の導入時期
 では、みとり算だけの練習はいつ卒業するのか。それは受験したい級によります。
 全珠連の段位 = 日商2級
 全珠連の4級 = 日商5級
 全珠連の9級 = 旧日商7級 が目安です。
 ちなみにうちの教室では全珠連4級でかけ算・わり算・みとり算を揃えたいので、日商5級みとり算合格→全珠連4級みとり合格→全珠連4級かけ算合格→全珠連4級わり算合格、という順で指導していきます。
 ちなみにどこの級を目指すにしても、かけ算を一気に指導することに変わりはないので、10問毎(または5問毎)に難易度が変わるピラミッド形式のプリント集を使えば問題ないでしょう。計算力がついているので計算方法の習得のみに意識を集中して取り組めるため、短期間にどんどんレベルアップできるでしょう。
 代表的なのは月刊サンライズ発行のアバカスサーキットです。
今回は初歩学習が終わった後の進め方の概要について書きました。細かい注意点や教材の紹介(作り方)、詳しい説明は別の記事で書いていきます。